人前で「生きにくさ」と「多世代交流の居場所のデザイン」について語ることになったので、日々の生活記録を兼ねて情報をまとめる。

開講当日に至るまで

昨年度受講した学芸大の公開講座の最中、受講仲間で先輩であるSさんから「活動の実践のこと、Dojoについて、皆の前で喋ってみないか」と誘われた。「私にできることがあるなら」と快諾。
そうして実現したのが、7月に開催された3回連続講座「地域から"孤立"をなくすヒント2」のメイン講師。
久しぶりに委託の講師業なのでドキドキワクワク。
自分の体験談を中心に語る案件だから、楽しみながらできそう。

とはいえ、講師業となると過去のトラウマ(※)が呼び覚まされ「やっぱりお断りしようかな」と思ったりも。
大丈夫だよ。Sさんはマトモな人だから大丈夫だよ、と自分に言い聞かせる。
念には念をで、公開する写真は覆面・個人名の表記はビジネスネームで(フルネームを出さない)とお願いし、了承を得た。

※ 数年前に某所でプログラミングワークショップの講師兼ファシリテーターを依頼された時のトラブル。発注者の「プログラミング教室に関心が高いのは学歴志向の人。高級感を出して、裕福な家庭に訴求すべき。」という後出しの意向で、私の経歴を誇大演出させられた(提出原稿を改竄された)上に「アタマが良さそうな写真が良い」などと言ってクローズドで公開していた写真を無断転載された。こちらは何度もNGを出していたにも関わらず、「良いことだから」と強制執行された。なお、以後の仕事は全て断り、人間関係も断った。

講座の概要 - 企画の背景

Sさんは、講座の運営主体である田無公民館の職員で、この企画の立案者。
これまでにも現職や前職で様々な講座を運営し、講座受講者がサークルを作り次のアクションを起こす支援を受講者に伴走しながら行っている。

「地域から“孤立”をなくすヒント」は、西東京市田無公民館主催の「現代的課題を考える講座」のひとつとして開講された連続講座で、ひきこもり経験者の話を聴いて当事者の理解を深めようというもの。
主な受講者は当事者本人やその親、本講座に関心を持った地域の人。
昨年度に続き、今年度で2回の実施となるが、概要の違いが興味深い。

ひきこもり状態や、細切れな不安定雇用によって、行きづらさや働きづらさを抱える人と社会をつなぐための知恵や工夫を学びあいます。
ひきこもり経験者の話を聞き"当事者が望んでいること"についての理解を深めます。

平成30年度「地域から“孤立”をなくすヒント」講座案内チラシより抜粋

子供が自由にプログラミングを学び合う「コーダー道場こだいら」の実践から、ボランティアの関わり方や場づくりを学びます。

令和元年度「地域から“孤立”をなくすヒント2」講座案内チラシより抜粋


ザックリといえば、昨年度は「当事者の話に耳を傾けてみませんか」、今年度は「外に出て社会参加してみませんか」というもの。
それはそうとしても、Sさん本人も仰っていたが、今年度はなかなかの「離れ業」である。
(「離れ業」とか「飛び道具」と仰っていたよーな…うろ覚え…)
ボランティアに参加は分かるが、プログラミング教育関係とひきこもり関係が盛り盛り。
演劇で言うところの「当て書き」風に進めていたので、なるほど納得である。
ちょっと斬新な内容だけど、どんな人が参加するのだろう、と興味津々。

講座の構成

ゲストは開催3ヶ月前に確定、チラシは2ヶ月前に完成した。
内容の詳細が決まったのは1ヶ月前。Sさんの意向を伺いながら対面やメールで打合せしながら詰めていった。
私は基本的に、何事に対しても「現場の状況を見て都度改善を行う」スタイルなので(だから一発勝負ノーミス義務案件は無理)、「2回目以降は1回目の様子を見てから考えれば良いや」と雑に考えていた。

Sさんは、今年の初春に小平道場へ見学にいらしている。
道場の現場で見たこと、公開講座で書いた実践記録を踏まえ、受講者の前で私に話して欲しいことが具体的に定まっていた。

  • 各回のセッションの流れ(タイムスケジュールなど)
  • 「垂れ流しのスライド」のこと
    →会場でも流して欲しい
  • 道場でいつもやってる感じで講座を進行
    →学校みたいじゃない学びのスタイル…というのを知って欲しい
  • ボランティアはどんなことをするのか
  • ボランティアはシロウトでもできるのか
  • サークルの立ち上げ経緯
    →ボランティアでどのように立ち上げたのか
  • 参加者がゴッソリ入れ替わった時のこと
  • 保護者が自分の作業をしながら子供を見守っていたこと
  • 高校生ニンジャも設営撤収作業に協力していたこと

ほかに、服装について「いつもの(作務衣)」でと指定有。
当初は講師が私1人のみの第1回で全て話そうと考えていたが(Sさんもそういうイメージだったし)、案内チラシや市のウェブサイトなどの資料を見直し、少し配分を調整することにした。

今回の記録

当日の配布資料など

スライド資料や配付資料など、各回毎にまとめた。

ちなみに、今回の講座のタイミングで、過去のLT資料などもGitHubページでまとめて閲覧できるようにした。

1回目(7月7日):
子どもと大人が一緒につくる、学び合いの場

「道場でいつもやってる感じで」とのリクエストを頂いたものの、小平道場の「いつもの感じ」をやるにはハードルが高い。そもそも今回の講座は、受講者がプログラミング体験を期待して参加するとは限らないからだ。さて、どうしよう。
それなら先ずは、こちらからザックリと話題提供をし、都度聞きたいことを尋ねてもらうのがいいのではないか。
ということで、質疑応答の時間を長めに取ると、事前の打ち合わせで決めていた。
実際に講座の中で挙手で確認したところ「プログラミングの教え方を指導してもらえる」と期待して来た人はゼロだった。 なので、「プログラミング」に関する情報を控え、市民活動を新しく始めるための話題を中心とした。

PETS と ozobot の体験会

とはいえ、プログラミング道場の人が来て「プログラミングって、誰にでもできるものなの?」というところを触れないままでいるのも難なので、体験時間を設けた。
体験時間の進行は、小平道場に参加してくれている Yukin_koさんにお願いした。
というのも、Sさんとの打合せの時に申込者の名簿を確認していたら名前をみつけたからだ。
「せっかく参加するなら、ついでに何か見せてもらえば良いのでは?」と、本人のいない場で勝手に話しを進めた。
道場へ見学にいらしたSさんが、Yukin_koさんの作品発表を見て気に入った様子だったし、適任だろうという判断。
もちろん、最終的には本人の合意を得てのことで、決して無理強いした訳ではない。

実際に実施したのは ozobot と PETS の体験会。
グループでいずれか興味のあるモノを選択してもらい、試してみて、グループ毎に軽く発表してもらった。
(当事者らへの配慮で、グループワークに参加しない見学枠(島)も作った)
アハ体験とアイスブレイクの効果があって、場が和んで良い感じになった。



質疑応答で出た話題

私の話と体験会を踏まえ、どんな気付きを得たのか、どんなことが引っかかったのか等々、意見交換を兼ねた体験会の席のままグループワークをしてもらった。
その上で質疑応答を行った。

  • 運営にあたり外部から支援を受けている?どこから?どうやって?
  • 参加者が使用する機材はどうしてる?
  • 参加後に何か働きかけたりするのか?参加者の意識は?保護者は?
  • 講師のプログラミング経験は?
  • 1回きて来なくなったボランティアは?持続可能な仕組みはどのようにしている?
  • タブレット、スマホとかでもコードが書けるのか?
  • 会の立ち上げ時に機材等の準備はどうした?
  • なぜ子供たちを「ニンジャ」と呼ぶのか?
  • 会場はどういう場所を使用している?
  • [おまけ]参加者の年齢制限のこと

子供たちの学習支援ではなく、受講者自身がプログラミングを学習したいという反応が多めだった
なので、単発でHour of Code というイベントをしても良いんだよ!!という話もした。

今回の講座では派手なミスをやらかした。
終了時間を予定より30分も超過したのだ…。
受講後のアンケートの回答にもクレームが入っていた。申し訳ない…。
そもそも話す情報量が多かった…まあ、それは事前に指摘を受けていたんだけど…調整ミス…。

それはそうと受講者のアンケート、Sさんからは「この手の講座のアンケートは、辛口評価が多いもの」との事だったが、概ね好感の内容だった。
「講師があまりにも残念過ぎて運営陣が憐れまれたのでは」と疑っているが、運営側に悪い内容ではないなら結果オーライかな。

2回目(7月14日):
いろいろな子どもや大人にとって、居心地がよい場とは?

CoderDojoと出会うまでの話、ひきこもり時代のことなどを話して欲しいとのことだったので、そうした。
前回の反省をもとに、今回は情報を詰め込まずざっくりと簡素にまとめ、時間配分に配慮した。
講座の主題にあわせて「ひきこもりをやめて、どのように地域と関わろうとしたのか」という視点でまとめたことが、今回の新しいチャレンジになった。

2回目の講座はちょっと特殊回で、この回だけ聴きに来た人がチラホラいた。
逆に、私用などでこの回だけ参加しない人もいたので、受講生の数は前回と大差なし。
なぜ特殊回かというと、「ひきこもりUX会議」も、その理事である恩田夏絵氏も、ひきこもり界隈では超有名で、恩田氏に会うために来たと仰る受講生もいるほどなのだ。
登戸の通り魔事件からの日も浅く、その声明文の話も出た。
己の無能ぶりを棚上げするのも難だが、この回の講師は本当に恩田氏1人で十分だった。
しかし…なんというか、今回の私は恩田氏の前座の役割すら果たせていなかったのなら、本気で悲惨。
受講生らから「薄汚いカスゴミが。私の貴重な時間を浪費しやがって。時間泥棒め。」と思われていたりしやしないかなと、不安しかない。

今回も終了直後に受講者のアンケートを拝見した。
もちろん、恩田氏については絶賛の嵐である。恩田氏の話だけ聞きたかったですよね…ですよねえぇ…。
そしてまたも私に対して「講座の目的と離れた話が多い」と書いている人がいた。
前回もいたけど、同意人物…?
私は、依頼通りに話をしただけですけど…。一体なにが問題なのか…。
色々とモヤモヤしたので次回の課題にすることにした。

3回目(7月21日):
ボランティアのさまざまなかたちや可能性を拓く

3回目はゲストが盛りだくさんの回。
自分はこれまでの2回で話さなかった内容を軽くするだけにして、他の人の話が多めになるようにした。
…のだが、何を話すか悩み過ぎてスライドがギリギリまで準備出来ずに遅刻…スミマセン…。

それで、先に他の講師の方々が話をして、最後に私が軽く話をするという順番にしてもらった。
Sさんの柔軟な采配、助かります…m(_ _)m

今回は活動を始めて間もない(とはいえ経験豊富な)方々からの、運営の体験談が中心。
ゆめこらぼでメンター養成講座を行っているお二人はプログラミング教育の諸々の話をしてくれた。
「さすが〜!GJ!素敵!最高!もう完璧!!」と内心大絶賛である。
受講者的にはゲストが多く情報過多でおなかいっぱいになっていたようだが、贅沢な回だったのでは。

そして改めて私の番。
前回、前々回のアンケート回答で見た課題を何度も見直した。
「子どものおつかい」ではないのだから「頼まれた通りにやりました」では不十分である。
クライアントの意向を汲み取りつつ、受講者が講座に求めることに対する想像力を働かせなければ…。
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(余談だが西東京市のWebサイトでの英語表記が"Tanashi Kominkan"だと知って驚いた。Public Hall ではなくて Kominkan)

そこで、最初に過去2回はどのような話をしたのかを振り返った。
(あと、「私の話に興味がないなら離席して頂いて良い」とも事前に伝えた)
おさらいを兼ねて「どんなキーワードのもとに、どんな話題を提供したのか」を話した。
次に、そもそも今回の講座で取り上げられたキーワードは、皆どのように認識しているのかを確認。
今回の講座のサブタイトルは「子どもも大人も主体的に関わり合える場をつくるには」である。
主体的に関わり合える場ってなんだ?
そもそ主体的って、なに?自主的と主体的と…なにが違うの?
それは全員が認識をひとつにしていることなのか?
あれやこれやと問題提起をした。
そして「私はこのように解釈をして、このように話題提供をした」とハッキリと説明した。

出入口調査

実は1回目と2回目の講座の最初に「出入口調査」も行っていた。
講座のキーワードに関連するアンケートだ。
「認識の違い」について話す時に、このアンケートの結果も踏まえた。







質疑応答や感想

私なりに考えて話したからか、今回は受講者からハッキリと質問が出た。「『孤立』に対するプログラミングの強みはとは何?」という質問が。
Sさんがここで今回の講座の企画意図を改めて説明。
孤立に対する解決の糸口のひとつとして紹介したことなど、丁寧に言及。
どことなく他の人たちからも「そういう意図だったんだ…」という空気が漂ってきた。
一応納得してもらえたのかな。はて。

こうして3回の連続講座が終わった。
Sさんはスライドの「ライフロングキンダーガーテン」からの引用部分を大変気に入ってくれた。
何を話すべきか本当に悩みに悩んだけど、気に入って貰えるモノが発生したりもあって、よかった。


(引用:第3回スライド資料より

そして、例の気になるアンケートの回答は…
「講座の目的と離れている」の対象が私から公民館に変わった。
うーん、なんというか、「チガウソウジャナイ…」気分。
Sさんも、全員が良いと思うものを作るのは難しいといったことを言っていたし、ここまで行くとあまり気にしない方が良いのやも知れない…。

主催者が勉強できることが勉強会開催の良さ

アンケートの回答も個性があっておもしろい。
自由記入欄には、Sさん宛の私信もあった。

一体なにごとかとSさんに尋ねたところ、そうやって親切に情報提供してくれる人がいるとか。
なるほど、定番のやりとりなのか。

そういえば、他の勉強会にでも「勉強会を主催するのは、自分が勉強するため。呼びたい人を呼んで聞きたいことが聞けるところが良い」という話が出た。
考えたら、勉強会を主催するのって、他ならぬ自分のためだよな。 いや、まあ、Sさんは公民館職員だから地域住人が自走するためのお手伝いをしているわけだけども…それでもやっぱり企画者のやり甲斐にもつながるよなあ。
世の中のビジネスでは「企画屋」も多々存在するから、すべてが世のため人のためとは思わないけど。
生涯学習のシーンだとやっぱり自分のためになるよなあ、と。

及第点と次回の課題

情報の整理整頓不足

最初に依頼を受けた時点で「てんこ盛りの企画」だと認識していた。
しかし、私が受講生(のニーズ)に対する見積もりが甘く「それだと受講生がおなかいっぱいになるから、こういう構成にした方がより良いのでは」という提案が浮かばなかった。
だからSさんからの要望を鵜呑みにするところが多々あった。
結果「ひきこもり当事者だけの話を聞きたかった」「コーダー道場の事が分からないまま参加してポカーンとしていた」という意見もあった。
プログラミング教育の話もCoderDojoの話も一切せず、極力「元ひきこもりが市民団体を立ち上げげた話」に集約するよう努めたにも関わらず。それでも情報過多だった。
もちろん万人受けが難しいことは承知しているが、今回「刺さる層」には届いたのだろうか。
もっともっと想像力をはたらかせる必要がある。
業務を請け負う身として、まだまだ未熟だと、反省しかない。

紙の資料至上主義…

事前に用意する資料が課題。
締切ギリギリマンだからもあるが、「紙の資料は後から修正や追加ができないし、荷物になるからイヤ」という理由で、第1回の時は紙の資料を最小限にした。
もちろんインターネットからアクセス出来るように、紙のチラシにQRコードとURLを記載したのだが、年配の方から「資料を用意しないのはケシカラン」的なクレームがガツンと来た。
インターネット上で公開してますって、講座中にも説明したじゃん…。
紙の資料にも掲載したし、スライドでも投影したじゃん…なにがだめなの…。
…と不満タラタラはさておき。

社会教育の現場的には、QRコードで案内する方法は新しかった様子。
私は別に当たり前化しているのでなにも思わなかったけど、温故知新な心境。

継続学習会にも参加

講座終了後の継続学習会に参加してみた。
受講者が新たにサークルを立ち上げるための補助的な勉強会で、どの受講者がどんな風に参加の継続を検討しているのかを知りたくて、参加してみた。
ところが、夜半に台風近接の予報が出ていた(※)からか、晴天にも関わらず参加者は僅少だった。
結果「少数の顔見知りどうしの茶話会」となったけれど、これはこれで密な会話ができて、大変有意義だった。
こういう雑談の中から学ぶことは沢山あるよね、と、盛り上がった。
普段の継続学習会もこんなユルい会合なのか分からないけれど、何かしらの問題意識を抱えている人達がフラッと集まって気軽に会話ができる場所があると、何かしら新しい事が起こりそうな気がする。どうなのだろう
今後、西東京市周辺の人達がどのように集まって、どのような活動を展開するのか、隣町の住民としてとても興味深い。

(※ 台風15号が接近。なお、10月の継続学習会も台風接近で中止となった…)

ひきこもり x IT勉強会のニーズ

今回の講座のことで、私も少し「ひきこもり」界隈の人達や孤立の問題を抱えている人達と交流する機会を得た。
けれども、私自身が「困っているような、困っていないような…」立ち位置だからか、「自立」や「就労支援」の話になると途端に他人事になってしまう。
社会教育や福祉に関わっている人達から私の活動の話見ると、ヒントのひとつに見えるようだ。
ひょっとしたら、孤立している人達が外に出て、社会参加するきっかけになるかも知れない。
なるほど、言われてみるとそんな可能性も秘めた活動なのか。CoderDojo、すごいな。
…と、他人事のように関心している。
私も、メンター養成講座とか、保護者のための勉強会とかそろそろボチボチやれたらと思うところである。
のらりくらり、ゆるゆると。

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