9月22日に開催された技術書オンリーイベント「技術書典7」で頒布した合同誌(複数名で執筆した同人誌)の制作プロジェクトについて、備忘録を兼ねてまとめた。

概要


企画立案〜当日の頒布

すべてのはじまり

すべてはおーらんさんのこの一言から始まる。

ここで私が煽り半分に絡む。


偶然からの合意形成

後日判明したのだが、おーらんさんは「同人誌即売会で委託するとは何するモノか」を良く理解しておらず、「みんなで一緒に何か作るのかな」とおぼろげに思っていたらしい。
その後、私が思いつきの意見を投稿したことを契機に奇跡的に合意形成がとれて、プロジェクトが動き出す。
screenshot_190710_sub (※Facebookより、当人の許可を得て掲載)

人前で独り言を漏らすって、存外悪いことではないのかも(笑)。


制作、入稿、受取

プロジェクトメンバーの募集

メンバーは、私とおーらんさんの2人で声掛けをして集めた。
それぞれが声を掛けたい人に声を掛けた。
私は「この人が参加してくれたら面白そう」と思う人を選んだ。
大半がDojo関係者だが、技術書典7に落ちたという知人や全然関係のない人にも声を掛けた。
あ、もしかしたら、こぞって数頁しか書かないかもしれない…。
保険を兼ねて少し多めに声かけた結果、集まったのは12名。結構集まった。

合同誌のテーマ - 誰の何のための合同誌か

合同誌を作ろうと言ったモノの、「何を書くか」が難しい。
テーマがあったほうが良い場合もあるし、ある方が難しい場合もある。
買う人の立場から見ると、テーマが揃っていた方が買い易くもある。

まずは「同人誌を作ってみたい」という目的を実現するなら、あまりテーマを限定しない方がラクに動ける。
実際にテーマを絞らずに作った合同誌(技術書典6で入手したモノ)を見せながら、そんな話をした。
テーマを絞らないなりに「誰に届けるか」を考えた。
CoderDojoPCNなどのコーディングクラブを運営している人やプログラミング教育に関わっている人達が、そういう活動に参加している人や活動に関心のある大人や子供向けに何か書く」というところでまとまった。
…まとまった…のか…?
いちおう読み手を意識したのだからアリだろう(雑

ライティングの仕事を意識

商業誌などのライティング経験者は私を含めて数名、大半の人はライティングも同人誌の制作経験もない。
ときどき「CoderDojoに関わるコトで人生が変わってしまった」人を見かける。
新しい経験をして「フリーランスの道が開けた」とか、人生が変わったら、ちょっと面白いよね。
この同人誌が各自の営業ツールになったら面白いのでは。
なので商業誌を作るノリで進めることにした。

それと、私は進行管理やライティングの実務経験は多少あるが「プロジェクト管理」の経験はほとんどない。
私自身がプロジェクト管理の練習をする良い機会ではないか。
私は私で実務経験の浅さを趣味の活動の中で補って行けば良いのではないか、などと考えた。
「とにかく1度は紙媒体の本を作ってみたいよね」ということで「何を作るか」は決まった。

私は、プロジェクトの最初の作業として、Dojo Scratch本のプロジェクトをヒントに全体の進行の方針を決めた。
それから、執筆経験の浅い人達がスムーズに作業をできるように、幾つかの学会の学会誌を参考に投稿規定を作成した。
投稿規定はリンク先のテンプレートのような内容で、メンバー全員と共有した。

デザイナーの参加

せっかく色んな人が参加して合同誌をつくるのだ。1人でも多くの人に手に取って貰えるような本にしたい。
そのためにはひとつひとつのコンテンツ力もさることながら、デザインのチカラも必要だ。
そこで、フリーランスとしての働き方を検討しているグラフィックデザイナー(Dojo関係者)にも声を掛けた。
活動に興味を持ち、スケジュール的に合いそうなのでとOKをもらった。非常に有り難い。
課題がなくもなかった。スケジュール的に合いそうとは言っていたモノの、公私共に多忙な人で、どの程度どこまで協力してもらえるのかが不透明だった。
加えて、出版物の制作経験はほとんどないという。
なので、私が可能な範囲でサポートに入ることを約束した。少しではあるがInDesignを使ったDTPの実務経験があるので。
そして本人にとって無理のない範囲で、自らが主体となって作業をしてもらうようにお願いし、了承を得た。

タイトルと "Party Parrot"

プロジェクトの初期から、本のタイトルは「空気を読まない感じ」「カオスな感じ」にしたいねと話していた。
当初はSlackにふざけて追加した絵文字「Party Parrot」っぽいものが良いのではなどと話していたが、考えれば考えるほど定まらず、納期ギリギリまで粘った。

slack1 slack2 slack3 slack4

(※Slackのワークスペースより、メンバーの許可を得て掲載)

12人で作った本だが、技術の話を書いたのが11人だったので表記は「11人の」となっている。

parrotは、プロジェクト進行中のテンションを維持する役割を担っていた。
当日のユニフォームとしてTシャツをお取り寄せしたりも。


「同人誌は薄くて高い」を裏切る

なんやかんやで200ページを超えてしまい、冊子の厚さが14mm弱となった。
商業誌(Dojo Scratch本)よりも厚くなるミラクルが発動。11人が本気出すとすごいな(笑)。

というのも、まず、おーらんさんの原稿が64頁もあった。厚いし熱い。
投稿規定には「1ページ以上、上限なし(多くても30ページくらい?)」と書いていたのでダメではないが、口頭では「10数頁くらいのイメージで」と伝えてきたつもりだったし、そこまでになるとは思わなんだ。
もう、おーらんさんだけで薄くて高い本が1冊できるじゃんww
とはいえ私や他の何人かも数十頁書いており他人様のことを言えた義理ではない。皆、思ったより書いたねw

ページ数が多かったのは元の原稿のボリュームもさることながら紙面レイアウトの問題もある。
当初、1ページ1ページに挿入された図表がとにかく大きかった。
私が自分自身の原稿が遅れていてDTPの動きを確認していなかったのだが、メンバーから「写真をそんなにリッチに入れてもらわなくても大丈夫なのに」という声が聞こえてきたことに違和感を覚えて、データを確認して発覚。
………いや、まあ、確かに「レイアウトに凝る必要はない」と伝えたのは私なので、私の指示が悪い…。
あとで、組版作業後に印刷してチェックしていないことも判明。「そりゃ、言われたとおりの作業はしてるし、流したら流しっぱなしでも何の疑問も持たないよな…」と納得。

DTPに関しては、作業の省力化と完成図の認識を合わせるために、投稿規定と併せて本文のレイアウトの仕様書を用意した。あわせて印刷所が発行している原稿制作マニュアルも渡した。
仕様をあまり仔細に決めると、それを受けたデザイナーが作業しづらくなる可能性もある。趣味でやるんだし、デザイナーの裁量でやりたいようにやってもらった方がいい。だから仕様は最小限に留め、打合せでもそのように伝えていた。
しかし今回はそれでは不十分だったな、と。そもそも、Webデザインの実務経験のあるグラフィックデザイナーが必ずしも技術書を読み慣れている(どういう風にマニュアルの紙面レイアウトを組めば良いのかある程度イメージが出来る・提案ができる・仕様の不足部分を補える)訳ではないことが、私には全く想像出来ていなかった。
「やりたいようにやってもらう」点でも、「やりたいようにやる」ことと「やるべきこと」の区別がつかなくなるケースは全く想定できていなかった。まさかテンパりやすい私が、テンパりやすい他人のメンタルバランスをサポートすることになるとは…。あと、マニュアル等の書類にしっかり目を通すタイプかどうかも見落としていた…まぁそこは目を通していても忘れることもあるから逐一点呼が必要だったといえばその通りなので、私の管理不足…。
プロジェクト管理の上で、他人に対する想像力を働かせる必要があること、大変勉強になった。
もちろん、紙面レイアウトの経験がゼロではないからこそ持っているノウハウもあり、たくさん勉強させてもらえた。だから悪いコトばかりではない。
とにもかくもページ数が半端ないし、他にも色々あって、印刷所の納期が迫ってきたときに調整作業でてんやわんやになった。
私が調整作業を一手に引き受けたことで、私のInDesignスキルが少し上がったような上がっていないような。結果オーライ。

ページ数の調整は、どの原稿をどこに入れるか・どの印刷所に発注するかを決めてからにした。
オンデマンドでも4ページ単位だったり8ページ単位だったりするので…。
それでも調整仕切れない部分はまえがき・あとがきで調整した。
結果、おーらんさんのまえがきが2種類になるという謎構成。しかも書いてもらったのが入稿当日の早朝。


最大の計算外は印刷所の締切。
オンデマンドのプランで約100ページを超える場合、かかる日数が割増になる印刷所が多かった。これは盲点。
唯一「通常通り」と回答してくれた印刷所も、見積もりの返信を見たら微妙に数日増えていた。
9月は連休が多いから、その影響もあるのだろうな…。
調べに調べた結果、その時点で可能な選択肢は数割増料金かイベント前日に自宅へ配送(発送手配がその日)の2択。
それで、イベント前日に印刷所へ直接受け取りに行くことにした。

印刷所へは、念には念をで車で行くことにした。
しかし、私はペーパードライバーで運転が怪しい。
そこでメンバーの一人の原木さんに協力してもらった。
車で行って本当に正解だった…

当日の駐車場までは問題ないが、駐車場から会場までの運搬に問題があるので、急遽ホームセンターへ行って台車を購入。探せば安くてシッカリした台車が売っているモノだな。便利な時代だ…。
机の飾り付けの準備も淡々と。いつも通りの徹夜作業。


技術書典7 当日

自家用車で直接搬入の人が割といたので安心した。
前日に購入した台車も大活躍。

…が、サークル入場自体が大行列。
サークル入場時間が始まる10分前からスタンバっていたのに、台車で荷物を押しながら待つことになるのは予想外。会場30分後の10時半にどうにか入場することができた。

設営完了したところ。

前回(技術書典6)は、終始嫌な思いをした。だから元から商売色の強い人・そもそも企業の営業で出店している人が多い傾向を感じる「人材育成技術」系のエリアに配置されたくないなあと思った(そもそも技術書典てコミケとかティアとか他の同人イベントとはだいぶ空気が違うよね…)
今回はScratch(MITの方)の人たちの近くに配置固められた。ここも同人活動の経験がない人が多かったが、皆、良識のある人たちだった。
逆にこちらが御迷惑をおかけしたのではないかと大いに心配になるほど穏やかな人達に恵まれ、心穏やかに過ごせた。本当に良かった…。

それはそうとScratchのサークルが何組も出ていたことに時代を感じる。
こうしてイベント当日までの怒濤の日々が終わり、一旦収束。


費用、売上、在庫のこと

費用の負担を誰がするか

これまでも合同誌とまではいかないモノの、他の人たちにもゲストで参加してもらうことはあった。
しかし「ゲスト参加」という性質上、原稿を頂くだけ頂いて(アナログ原稿時代なので生原稿をもらう)、あとは全て個人プレーだった。仲間内でそういう感じでやるのが当たり前になっていた。
合同誌は、大学時代にサークルで部誌を作成したので全く経験がないことはない。ただ、費用は部費の範囲内でのことだったし、編集作業をしていたのは3、4年の先輩方で自分は好き勝手に書いた原稿を提出するだけだったし(2年の時に脱けてしまったし)内情を良く知らない。
ゆえに、どうにもチームのプロジェクトとなるとどういう風に動くのが適切なのかサッパリ分からない。

会費制に…

今回は相談の結果、「事前に会費徴収」ということになった。
一人あたり2千〜1万円を徴収して、完売したら収益を均等に分配しよう、と。
とはいえ金銭感覚の希薄な私、会費が「余ってしまった場合」の対処方法が分からず恐怖。極力、収支が等しくなるようにしたかった。
それで印刷費用が見えてから判断したかったのだが、ギリギリまで印刷の費用が見えず、結果的に後払い制になった。
印刷所に支払う費用はクレジットカード決済。メンバーからの費用の徴収に多少時間が掛かっても、収入のアテが一切ない無職の私でも借金爆増とはならないだろう…多分…というところ。

実際の費用と売上

合同誌は残念ながら一発で完売とはならず、在庫を抱えることになった。
100部刷って、24部の頒布。


印刷費用は、オンデマンドを選択したのもあるが、約8万円に抑えることができた。
最後の最後に一丸となって頑張った甲斐があった。
費用を抑えられたし、私の黒歴史もとい過去の同人誌に比べたら売れた方だけれども、在庫がたんまりあることには変わりない。どうしたものか。

会費制から原価で買い取りへ

もともと、参加した12名のメンバーには1冊ずつ無料で贈呈する予定だったが、その冊数を増やすことにした。
ただ単に増やすのではなくて、2冊目以降は原価で買い取ってもらう。
基本的には3冊ずつで、希望があれば増減可にする。
買い取り後の冊子は、各自で自由に取り扱って良いことにした。
無料で配っても良いし、メンバー内で取り決めた価格で頒布しても良いし、任せた。
私自身は元の予定通り、営業利益(売上から諸経費を引いた額)を全て小平道場に寄付することにした。
ちなみに費用の中に技術書典の申し込み費用は含まれていない。理由は、申し込んだサークル自体はあくまで私個人のものだからだ。
そうして私が抱える在庫を減らし、印刷費用を回収した。
私はイベントの度に数冊持ち歩いて行商たり通販して、他のメンバーも各自のDojoや他のイベントなどで頒布し、それを報告し合った。

通販のこと

技術書典の帰り…荷物の搬出時に3つ隣で参加していた@YukiMihashiさんも在庫が残ったというので今後どうするのか尋ねたところ、通販すると言っていた。販売方法はBOOTHを利用するとのこと。
なるほど通販か。過去にも同人誌を作ってきたが通販の経験はなく。「それで買ってくれるモノなのかな」と、モノは試しに出してみることにした。
せっかくなので匿名での配送を試して見ることにした。
やってみたらやってみたで、知り合いがちょこちょこと買って下さった。やってみるものだなァ。みんなに感謝。
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匿名の通販、誰がかってくれるのか分からないドキドキ感があって面白い。
残り僅かだが未だ在庫が残っているので良ければこちらのページから宜しくドウゾである。

振り返りと改善の概要(KPT)

Keep(次も続けること)

  • お祭り感覚で取り組む
  • 挑戦したいことを持つ人、火急時に冷静な人、上流工程にも理解のある人、私に寛容な人と組む
  • 経験者と未経験者が混在のプロジェクト
  • 投稿規定の作成
  • 本の表題やプロジェクト名の商標権への配慮
  • 領収書を即時発行/PDF送付する
  • 行商と通販

Problem(現状の課題・改善点)

  • メンバーが残タスクを確認しやすいタスク管理方法を検討する
  • 印刷所を先に決める(けど、最悪の場合を考えて他の印刷所やプランなども確認しておく)
  • 私が1週間くらい自分の原稿を前倒し完成させる
  • テキスト原稿は下手なリッチテキストやMarkdownよりはプレーンテキストが間違いない(参考文献等のURLをハイパーリンクしちゃってる人&それを解読できない人…)
  • 1本あたりのページ数の上限、1ページあたりの文字数を規定する
  • 紙面レイアウトを指定する時は仕様書と「イメージしている見本」の両方を用意する
  • DTPを分業するにしても「ほぼ完成形」で提出してもらうのが良かったかも
  • 画像はRGBカラーのままでも良かったかも(PDF化の時点で一括変換できるから)
  • 「やるべきこと」と「やりたいこと」の見境がなくなっている人には冷静に対応する

Try(次の挑戦)

  • また何かしらの合同誌を作る(できればDojoの資金調達に結びつくような…!!)
  • 電子書籍とセット販売、電子書籍「も」販売、という選択肢
  • 電子は「セット」と「バラ」売り。
  • SNSでの発信(日々の活動も含めて)
  • パッと表紙を見て中身を想像できるデザイン(タイトルや副題を付けるもしくオビを付けたり)
  • Dojo関係者有志でイベント参加と同人誌頒布(※)
(※ 後日談だが、11月に開催のオープンソースカンファレンスに有志で参加して合同誌の紹介もした)

おわりに

私はどうにも、その活動が営利非営利・ジャンルを問わず、同じプロジェクトの関係者に迷惑ばかりかける。
迷惑かけてばかりだからといって人と関わることから逃げていても、私自身の成長がない。
何をすれば迷惑じゃなくなるのか分からないけれど、迷惑をかけっぱなしの状況を打破したい。
他の人と同じやりかたで行動することはできない。忍耐とか地道な努力とかそういう問題ではない。無理なものは無理というだけの話だ。だから、自分に合うやり方で改善活動をしていくしかない。
自分自身を冷静に俯瞰できないから、周囲からのフィードバックを得ながら立ち位置を見定め、振る舞いを調整して行く。そのやり方が一番自分にシックリくる。
そして、私に対して協力的・好意的で意見をハッキリ言う、多少なりとも肌感覚の合う人と共に行動することが、現在の私にとって最も最善の選択肢だろう。

自分は「何をやるか」よりも「誰とやるか」に非常に強い影響を受ける傾向がある。
もちろん「何をやるか」も非常に大切なのだが、一緒に活動する人のことも同じくらい大事で。そこがダメだと全てが無に帰す。
全てが無に帰すことを繰り返すのは、時間が勿体ない。
おまけに、無策で漫然と過ごしていては成長がない。永久に社会に参加できず孤立する。孤独死して遺体発見が大幅に遅れる。
孤独死は避けられないにしても、せめて3日以内に発見されたい。
そう考えると、私なりに無理をせずに社会に一歩ずつ出て行く道は、趣味の活動の中にあるのやも知れない。根本的に私は「ライス」と「ライフ」のワーク(活動)を切り分ける事ができないから。
だから私自身のためにも、今後も今回のような活動にチャレンジできたらと考えている。

ということで関係者の皆様、本当に乙でした。
PARTY OR DIE!!!!


参考資料(通販リンクなど)